庭の原状回復で借主と争う|雑木・庭木をめぐって少額訴訟やってみた

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15年賃貸で貸していた自宅の入居者が退去し、原状回復立ち会いに行ったら、裏庭がとんでもないことになっていました・・・

雑木が放置され、榎(エノキ)が5本生えていた

庭付きの戸建てを賃貸に出していたところ、退去後の庭に大きな雑木が生え、植えていた庭木の一部もなくなっていました。

「庭の原状回復」は、壁紙や床のように情報が多くありません。どこまで借主負担になるのか、管理義務はどこまであるのか。僕自身、かなり調べることになりました。

最終的に庭木の管理義務や未報告を理由として、神戸簡易裁判所に少額訴訟を提起しました。この記事では、退去時に何が起きていたのか、少額訴訟の経緯を書きます。

入居者の明け渡し後、15年ぶりに自宅に戻って驚いたのは、裏にはに5本の雑木が生えていたことです。葉の形や落ちた実から榎(エノキ)と思われます。

一番太い木のイメージはこんな感じです。

榎は放っておくと、どんどん大きくなるので、伐採する必要があります。もちろん、入居時にはありませんでした。おそらく鳥か何かが、実を運んできたのが生えてきて、手に負えなくなったんだと思います。初期段階でも、手で引っこ抜くのは難しい木です。

「なんで、管理会社に連絡しないの・・・」

他にも4本くらい生えており、いずれも北側のブロック擁壁の端に根を張っています。犬ばしりとブロック擁壁の間に落ちた実から根を張った模様。それくらい生命力が強い木です。

裏庭の狭いスペースなので、重機が入れられず、人の手で伐採して根っこから抜くと、数日の作業で75万円かかるとのこと!とんでもないことなってるやん!

契約書には「庭木の手入れは借主及び入居者」と書かれていた

そもそも、5年の定期賃貸借契約で、5年ごとに3回に渡って契約をかわしています。そこには、管理会社の担当者が気を聞かせて、庭木の特約を入れてます。こんな感じです。

本件庭木について、通常手入れ(伸びた枝葉を切り落とすなど自然樹形を維持しながら行う剪定、雑草抜き、落ち葉清掃、水やり等)については借主及び入居者にて行うものとするが、貸主の承諾を得ず本物件敷地内に新たな樹木を植えることや現場の樹木を抜くことは不可とする。尚、借主が善管注意義務を怠らない範疇で庭木が枯れた場合には、借主はその責まで負わないものとする。

手入れをしなかったから、雑木が大きくなったことを責めてもしょうがありません。それよりも、15年間何の連絡もなかったことに驚きます。

そこで、

「庭木を完全に管理できなかったことより、管理できなくなった時に連絡がなかったこと」を問題にしました

「ここ2年で急激に伸びた」入居者の説明

これ以外にも表の庭のハナミズキが抜かれていて、ツツジも大半が消失してます。これについて入居者は、

入居した約10年前後は、裏庭も草が生える程度で、毎年手入れは、この15年(4月から10月)あたりで、収拾ついておりましたが、ここ3年位あたりで、裏庭の木の伸びるスピードがかなり早く、2年前までは伐採したりして、ゴミだしにも対応できてましたが、ここ2年で急激に伸びました
ハナミズキは、昨年10月台風のあおりで、入口側に自然に倒れました
庭の手入れは、裏庭も前もどちらもしておりましたが、おそらく、枯死したものとみられます。
ツツジも抜いておりません
こちらも、枯死したものとみられます
こちらも、水を特に夏季にかけておりました
が、現況となってしまい申し訳ございません

いやいや、気づいてたなら、連絡しますよね?え、なんで?

原状回復費用は119万5,700円になった

造園業者から取り寄せた、見積もりは総額で119万円というとんでもない金額になりました。

エクセルに転記した明細がこちらです。

「原状回復」ではなく、債務不履行として考えた

当初、管理会社を通して見積書を提示しました。おそらく120万円近い金額を支払うことはないだろうと、120万円を折半して、60万円づつ負担しませんか?という和解案を提示しました。

1週間後に借主(法人)から返ってきたのは「60万円の負担など、認められない。40万円の敷金の一部を返して欲しい」というもの。

はぁ・・・こちらは、この後、ここに住むんですよ?

そこで、弁護士の無料相談で本件をLINEで問い合わせ。とても丁寧な弁護士事務所で、わざわざ電話してきてくれました。そして、事情を聞いてくれて、LINEで返事してくれます。それがこちら。

内容を確認させていただきました。
やや特殊なケースではありますが、一般論として、借主側には植栽の状態について一定の管理を行う義務が通常あります。

どちらかと言えば元々ある植栽が枯れてきた場合が典型例ですが、借主は不動産業者や貸主に報告して対応を行う機会を与える必要があると言え、当初なかった木が生えてきたことについても同様に報告をし、貸主に対して対応を行う機会があったものと思われます。

なお、一般的には植栽の管理について特約が設けられていないケースも珍しくなく、そのような場合でも借主には原状回復義務(借りた時の状態にして返す義務)があるため上記程度の義務は認められるのが通常です。

今回は、特約において植栽の管理について特に記載があるということですから、特約が無いケースよりもさらに不利です。

また、「裏庭に木が生えた報告を怠っただけ」という主張は、責任がなくなる方向ではなく、義務を怠っていたことを認める内容ですので、積極的に不利な内容の主張をされているように見受けられました。

今後話し合いで合意に至らない場合には、民事調停や民事訴訟を通じて裁判所の判断を仰ぐほかないと思われるものの、上記の内容から樹木の撤去について一定の金銭的負担が生じることはやむを得ない可能性が高いように思われます。

ご確認のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

ただ、担当の弁護士と会話していた感触だと、仮に特約の義務を主張して戦っても、敷金の40万円を保全するのが精一杯ではないかと。原状回復費用の裁判、結構判例探すと色々出てきますが、たいてい借主に優位な判決ばかり。

そりゃそうですよね。退去する時に、あれやこれや、費用請求されたら、ただでさえ引越しでお金かかるのに、原状回復費用を借金して払うことになりかねません。

ただ、そういうので揉めるのが嫌だったので、うちは法人契約で募集していました。個人宛じゃ、あまり強いこと言えないけど、法人相手ならもらうべきところはもらう、という考え方です。

敷金40万円を充当し、13万5,700円を請求することにした

最初は民事調停も考えたんですが、多分、40万円の敷金充当で和解しませんか?と持ちかけられるのがオチ。

それなら、自分で証拠を集めて、民事訴訟を起こそうと。ただし、雑木の根が生えている場所が、北側のお宅のブロック擁壁の根本に4本生えていることがわかり、これじゃ、借主に請求できない。

ということで、明細から隣の家の分を削って、535,700円の損害にして、敷金を充当して差額135,700円の少額訴訟を提訴することにしました。

60万円以下の請求なので、少額訴訟という方法を取ります。しかも、原状回復費用ではなく、債務不履行による損害賠償請求。経年劣化とか余計な反論させないように。こっちは、契約不履行でこれだけの損害が発生してるんですよ、払ってくださいね、という立て付け。

これなら1日の審理でおわるし、被告は反訴できないので、最悪負けても400,000円の敷金は返金しなくても大丈夫です。もちろん、相手から40万円返せ、と訴えられたら別ですが、そんな経済的合理性のない裁判を法人が提訴するとは思えません。証拠だって、こちらの敷地内に入れないから、そろえるの難しいですよね。

神戸簡易裁判所に訴状を提出

ここで頼りになるのがAIです。ChatGPT、Geminiそれぞれに意見を聞きながら、証拠を集めて主張の骨組みを作っていきます。

準備した書類は下記のとおりです。
・訴状(裁判所掲載の書式:少額訴訟用・汎用)
・損害賠償明細_義務違反(明細ごとに善管注意義務違反、通知義務違反などを記載)
・甲第1号証:契約書のコピー
・甲第2号証:施工業者からの見積書119.5万円
・甲第3号証:損害発生箇所位置図(建築時の図面を使ってMAPに)
・甲第4号証:入居時の庭・建物写真(これがあると強いです)
・甲第5号証:入居者が退去時に管理会社に宛てたSMS
・甲第6号証:管理会社が僕に宛てたSMS
・甲第7号証:裏庭雑木の現在の写真
・甲第8号証:ベランダ枯れ枝の写真
・甲第9号証:壁や敷地に発生したツタの写真
・甲第10号証:表庭の写真
・甲第11号証:部屋やテラスに残置されたゴミの写真
・甲第12号証:破れた障子の写真
・甲第13号証:隣の家との境界線の写真
・甲第14号証:自宅の不動産登記簿
・甲第15号証:被告(借主)との電話の記録(WORD)
・甲第16号証:被告との通話履歴スクリーンショット
・甲第17号証:陳述書

甲第17号証が最大の山場です。それまでの証拠は、裁判官に事実を見せること。そして、それらの点と点をつなぐストーリーを陳述書に書きました。どんな事件にもストーリーがあります。けれど、真実は被告しか知らないわけです。それをいかに証拠をもとにストーリーテリングするか。ここに注力しました。

陳述書の構成は下記のとおりです。

「管理義務があった → 異常を認識していた → なのに報告しなかった → 無断撤去までした → 貸主は確認・早期対応できなかった → その結果、損害が拡大した」

そして、今回争点にするのが、入居者は普段設備の不具合は都度連絡してきて、こちらも対応してきたのに、なぜ、庭の異常だけは連絡してこなかったのか?」

裁判ドラマでよくある、弁護士が被告だけが知り得る事件のストーリーを語るシーン。

連絡しなかったのではなく、連絡できなかった理由があるはず。

ここは裁判で明らかにしていきたいと思います。
裁判が終わり次第、更新していきます。

受理された少額訴訟の訴状



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