チープトリックの原点回帰ともいえるヘヴィーロックなアルバムAll Shook Up

音楽レビュー

チープトリックは僕の好きなロックバンドのひとつで、初めて聴いた曲は1979年のドリームポリスです。

当時の僕はまだ小学校6年生でしたが、「The dream police They live inside of my head」のキャッチーなメロディラインがすっかり気に入ってしまい、家や学校で口ずさんでいたのを覚えています。

さて、本作All Shook Upは、そんな大ヒットしたアルバムの翌年にリリースされたCheap Trickのスタジオアルバムの5作目にあたります。

このアルバムが発表される直前の1980年8月にオリジナルメンバーのベーシスト、トムピーターソンが脱退しています。

当時彼が脱退した理由はメンバーとの不仲と言われていますが、トムはその7年後にメンバーと再会し、あっさりと仲直りしてバンドに復帰します。

このアルバムAll Shook Upには、チープトリックの長いキャリアの中で生まれた空白の期間を語るうえで欠かせないアルバムともいえます。

プロデューサーにジョージ・マーティンを迎え、随所にビートルズ的なポップエッセンスを散りばめながらも、彼らのデビュー作に近いヘヴィロックともいえる仕上がりとなっています。

前作のポップな音作りに魅了されたファンは少しがっかりしたかもしれません。

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オススメの曲をレビュー

さて、このアルバムから僕がお気に入りの3曲をピックアップしてみました。

1.Stop This Game

アルバムの1曲目は、チープトリック節ともいえるオープニングの緊張感のあるコード進行から一転して、軽快でスピード感のある曲調で走り出します。

トムピーターソンの奏でる重厚なベースラインが、曲全体を分厚い壁で覆うのですが、バーニーカルロスの軽快なドラムワークとあいまって最後まで疾走する、そんな爽快な1曲です。

5.World’s Greatest Lover

チープトリックの数多くのバラード曲の中でもイチ押しの曲です。

ヴォーカルのロビンザンダーが愛する人のために切々と歌い上げるのですが、彼の哀愁を帯びた甘いトーンの声がしっとりとして実にいい感じです。

そして後半からリックニールセンのギターソロとストリングスの音色が見事に調和しながら壮大なエンディングを迎えます。

10.Who D’King

全編にわたって、ドラムスのバーニーカルロスがアフリカンなビートを叩きます。

彼のドラムは常にタイトで、派手なおかずは一切入りません。後半はアフリカの原住民のお祭りのような独特の雰囲気に包まれながら、歓声とともにフェードアウトしていきます。

アルバムセールス的には今一つだったこのアルバムですが、ファンの支持は意外に高く、当時のLP盤のライナーノーツを書いた渋谷洋一いわく「先祖帰りともいえる内容になっている。一枚目の音に近いのだ」とのこと。

チープトリックの原点回帰ともいえる貴重な一枚です。

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